ここはクソみたいなインターネッツですね

逆にクソじゃないインターネッツってどこ

シャーデンフロイデとサウダージ、または酸っぱい葡萄

Wikipediaを特集した番組を見た。マツコデラックスさんがマニアックなゲストから独特な世界を紹介される例の番組。ゲストはWikipedianと呼ばれるWikiの制作編集者だった。彼らはボランティアで記事を書いているとのことで、学生時代から度々お世話になっている身としては頭が上がらない思いだ。

システムエンジニアとして働き始めてからも利用頻度は落ちていない。むしろ増えている可能性もある。システム関連の言葉の定義や歴史を調べる時に重宝する。またちょっと変わった用途としては、今流行りのAIに文章や単語を学習させる際の辞書や教師として使うこともある。当たり前のことだが、調べ物としてだけではなく単純に読み物として面白い記事も山ほどある。眠れない夜を何度もWikipediaに救ってもらった僕としては、番組を見たからという短絡的なきっかけになってしまうのが心苦しいけれども、とにかく今後とも一層の発展をお祈りしたい。

先日とあるwebサービスのプログラムを書いていた際に、やはりWikipediaにお世話になった。具体的には「感情を表す単語」をいくつか集めなくてはならなくなったのだが、流石のWikipedia。「感情 一覧」と検索をしてすぐ、まさしくぴったりなページを見つけた。

感情の一覧 - Wikipedia

ああ、こんなにも興味深い単語一覧が未だかつてあっただろうか。僕は思わずプログラムを投げ出してそれぞれの記事を読み耽ってしまった。

特に面白いと感じたのは「シャーデンフロイデ」と「サウダージ」だ。30年ほど生きてきた中で当然人並みにたくさんの感情を抱えてきたつもりだったのだが、まさかこの一覧に一度も使ったことのない言葉があるとは思っていなかった。

シャーデンフロイデ」は「ざまあみろ」というようなもので、ネットスラングで言う「メシウマ」的な感情のことだと理解しやすい。

しかしサウダージの方は難しい。難しいからこそ興味深い。なんとなくポルノグラフィティの曲にそんな歌があったような気がするけど、歌詞までは思い出せない。

なんでも、郷愁だとか憧憬だとか、諦念だとか切なさだとかを混ぜ込んだような感情らしい。感情を表す言葉にとても似合った曖昧で微妙な意味合いだ。難しさの一方で、何か共感しやすい雰囲気も感じられる。自転車に乗りながら楽しそうにしている学生達を見た瞬間胸に浮かぶ、特に夏の夕暮れ時に多いあのモヤっとした感情のことなのだろうか。ひとはこの気持ちをサウダージと呼ぶのか。この歳にして自分の感情の名前を新たに知るとは、なにか胸にくるものがある。これは多分サウダージじゃない。もう少し無学に対する後悔とか直接的な切なさが刺さってるってわかる。微妙さのかけらもないくらいハッキリ痛いぜ。

それぞれの感情についてしばらく読んでいると、いつのまにかリンクをたどって「酸っぱい葡萄」という寓話について読んでいた。これもWikipediaの面白いところだ。リンクをたどって無限に読めてしまう。

酸っぱい葡萄を簡単に説明すると、手の届かない高さにある葡萄に「どうせあんな葡萄はまずい」と吐き捨てる愚かな狐の話である。なんとも説教めいた話で、これまた僕の心の真ん中にグサグサと刺さる。届かないものに対する憧れや持つ者に対する嫉妬を認められず、そのものを悪く言うことで自己防衛して安心しようという浅はかさ。情報が氾濫しているネット社会ではやってしまいがちなことだなあ。ぐうの音も出ない。

いやはやまさかこの歳でお伽話から教訓を得ようとは、中々人間完成しないものだ。前向きに考えれば、これからもたくさんのことを知ることができるし、子供めいた話から大切な生き方を学ぶことができる素直さが僕に残っているともいえる。

シャーデンフロイデと酸っぱい葡萄、どちらもやりがちで、短期的な気持ち良さはあっても人生にとってはよくないね。これからは一層何かを悪く言わず、人を傷付けないように気をつけて生きていこう。サウダージという感情も知れたし、まだまだいろいろなことを知る楽しみを失くさずにいこう。